連載記事

健康談話-活脳 Vol.1

掲載日:2002年9月15日 執筆者:久保長生(脳神経外科・医学博士)

 十数年前から久保商会の丸金会での健康談話させていただき、自分のためにも有益でした。脳神経外科から見た脳を中心とした健康談話をするのにいろいろと自分なりに勉強しました。活脳という題名は自分なりに満足しております。昭和55年久保商会の創立49周年記年誌の結束を生かすにはじめてドイツ留学記を書かせていただいたことを鮮明に覚えております。その後、久保商会の新年会などで健康についての講演をさせていただくようになり、健康談話ー活脳という演題名が定着しました。この時期はちょうどドイツ留学から帰国、自分なりに健康を考える時期となりました、更に故郷南勢町での講演会は極めて有意義で、脳を活かすことがいかに重要であるかを訴えております。さらに平成3年の創立50周年記念誌である続結束を生かすを再読してください。21世紀は脳の世紀、環境の世紀であり、脳を守るなど多くのスローガンがありますが、脳を活かすというスローガンはありません。自分の脳がいかに活かされていないか、もう一度考えましょう。とはいえ、最近は社会問題が極めて複雑になり、病気も多岐にわたっております。

 第一回は生活習憤病について話します。

 生活習慣病とは、物の本によりますと食生活や運動不足、喫煙、飲酒、ストレスなど、普段の生活の積み重ねを原因とする病気のこと。がん、脳卒中、心臓病をはじめ、糖尿病、高血圧や喫煙による循環器病、アルコール性肝疾患なども含まれる。かつては.「成人病」と言われたが、若い時からの生活習憤に起因するとして、1996年、厚生省(当時)が名称を変更、翌97年には「生活習慣病対策室」も設置した。総務省の調査によるとがん、脳血竃疾患、心臓病、糖尿病、高血圧の五つの生活習慣病による死亡者数(10万人当たり)は、1990年の427.7人から1998年には466.4人に増えた.全国で死亡者数が最も多いのは秋田県。東北地方は塩分摂取量が全国平均より多く、脳卒中などの脳血管疾患による死亡率が高い。福島県西会津町では1992年から、町ぐるみで在宅健康警理システムの整備や減塩食などの生活改善を進め、脳血管疾患の死亡率を改善させた。

 今回は生活習慣病の基礎となる男子と女子の寿命について考えてみましょう。

日本経済新聞のサイエンスライター生田哲氏によると、日本の男性の平均寿命は77.6歳で女性は84.6歳と、女性の方が7 年長い。米国では男性73.8歳に対し女性は79.5歳。ロシアでは男性の58.3歳、女性の71.7歳である。世界には200を超える国があるが、生田の調べたところ、男性が女性よりも長生きなのはインド洋上にあるモルディブと、エベレスト山を頂くネパールぐらいで、両国とも出生率が異常に高く、出産の際に死亡する女性が多いためと考えられている。寿命の男女差には様々な要因が絡んでいるが、体つきや行動原理などを左右する男性ホルモンと女性ホルモンからも説明できる。赤ん坊や子供の時代を通して男子の死亡率は女子よりも少し高いが、差はごくわずかである。だが思春期に達するやいなや、男子の体の中では筋肉を発達させ、攻撃的な性格を高める男性ホルモン(テストステロン)が大量に放出される。無謀な行動をし始め、時に暴走し、交通事故や暴力事件などを起こす。この結果、米国では15歳から24歳の男性の死亡率は、女性の3倍にも達する。一方、女性ホルモンのエストロゲンは、体内のコレステロールに作用し、心臓病を防ぐ効果がある。コレステロールには、心臓病の原因となる悪玉コレステロールと、それを防ぐ善玉コレステロールの二種類があることは周知の通り。エストロゲンは悪玉の量を減らし、善玉を増やす効果がある。女性では閉経後にエストロゲンが滅少するので、悪玉コレステロールが増え、善玉コレステロールが減る。心臓病が、男性と同じように、高齢女性の主な死亡原因になっているのはこのためである。それなら、閉経後にエストロゲンを摂取すれば心臓病の発症を抑えられるはずである。この事実により、エストロゲン補充療法を受けている女性は、受けていない女性に比べ、心臓発作の発生率が50%も減少している。一方、男性に多いテストステロンは悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを滅らす。腹部に中性脂肪(トリグリセリド)も蓄積させる。血糖値濃度を制御するホルモンであるインシュリンが効かなくなり、糖尿病を発生しやすくする。テストステロンは、心臓マヒなどの心疾患(日本人の死因の第二位)と脳卒中など脳血管疾患(同三位)を増やしている。

 このような、自然の摂理は、こうした男女の生命の差を見越して、男子と女子が出生する確率に微妙な違いを設けているようだと生田氏は述べている。すなわち、精子と卵子が出会うときに、男の胎児の誕生する確率が少しだけ高くなっている。理由は簡単だ。細胞の中にある二つの性染色体のうちY染色体はX染色体より短い。Y染色体を持った精子は、X染色体を持った精子よりも軽いので早く泳ぎ、先に卵子に到着する。卵子の性染色体はいつもXなので、男子となるXY性染色体の組み合わせの方が、女子のXXより高くなる。女の胎児が100人生まれるとすると、男の胎児の割合は115。男の胎児が女の胎児よりも流産しやすいため、赤ん坊として誕生するときには男子104、女子100の割合に落ち着く。いつの時代も国家や文化が違っても、短命なのは男性の本質という結論に変わりはないようだ(サイエンスライター生田哲-日本経済新聞より)。

これらを読むとわれわれは自然の摂理でその命を一部は左右されているものの、更に日常努力で、これを超えていることも知っている。

 生活習慣病は文明社会が生み出した病気ではあるが、文明社会はこれを超えて寿命を延ばす効果をはたしていることも事実であります。現代社会では生活の乱れによる死亡も無視できず、われわれは絶えず不慮の死にも直面します。
命の尊さを知りつつ、生活の中から健康のありがたさを考えてみましょう。